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ノンジャンルでメモを残します 日記もときどき。

マンション内覧会

実は生意気にも新築マンションを購入した。


なにしろ三桁万の買い物なんかしたことないケチ野郎が、いきなり四桁万の買い物をするわけで、数ヶ月の間に様々な物件を見て回り、やっと「これだ」と思える物件に遭遇。売買契約から住宅ローン契約にいたるまでこれでもかと緊張しまくり悩みまくりの日々だったわけだが、もろもろ何とか乗り切り(本一冊かけるくらいのドラマがあったが省略)、いよいよ「内覧会」の日を迎えた。


というか、だいたい「内覧会」という言葉だって知らなかった。要は物件を引き渡してもらう前の検品の機会だ。たいていの場合、購入者が小一時間見て回って、目に付いた傷の補修を指摘するくらいらしい。デベロッパーのことは充分信頼していたのだが、いろいろネットで調べてみると、特に内外装の細かな施工ミスというのは普通によくあることらしく、それも素人が見てもよく分からない。あとから不具合になっても困る。ここはやはりエキスパートの力を借りたほうが良さそうに思えてきた。

内覧会」とGoogle検索するだけで、専門の不動産コンサルタントによる「内覧会同行サービス」のアドワーズ広告がいくつも出てくる。ということで、その中のひとつを依頼してみた。もちろんデベロッパーの担当者には、そんな人を連れて行くとは事前に一言も言っていない。


最寄り駅で待ち合わせして妻と三人で出来たばかりのマンションに赴いた。デベロッパーは特に驚くでもなく、ぜひじっくり見てくださいとのこと。
それではとばかりに内覧開始。僕と妻は玄関サイドから、コンサルタント氏に借りた水平器と懐中電灯などを駆使しつつ、床・内壁・水回りと一通り見て回ったが、けちをつけるところはほとんどない。浴槽の壁についたシャンプー台が、よほど意識しなければ気がつかないくらい傾いていたので指摘したら、担当者は「あーこれは行かんですね」とその場でドライバーを取り出して直してしまった。


それでもまあなんとか傷をいくつか探し出して指摘し、担当者は言い訳もせずテープで印をつける。言い訳ごまかしは一切なし。


コンサルタント氏はバルコニーから仕事を開始。図面と首っ引きで、もう、それこそ目を皿のようにしてじっくりと細部を確認する。一部屋を閉め切ってホルムアルデヒトの濃度測定も実施する。ときどきガシャンガシャンとサッシの立て付けを試す音がする。三脚を立てて、こんな機材でミリ単位の測定まで行う。


2時間半ほどかかっただろうか。


検査を終えたコンサルタント氏の報告は「実にすばらしい出来栄えです。久しぶりに良い仕事を拝見いたしました」というものだった。特に壁のクロス張りの出来は素晴らしいとのこと。ただいくつか指摘があるにはあって、たとえば出窓の上のコーキング(充填材詰め)が一部雑だとか、物入れの棚板を支える「棚受け」を取り付けるレールがちょっとだけずれていて、棚がわずかにガタついているとか、細かいながらもツボをついた指摘で、これ実にプロの技だった。


なによりもデベロッパー担当氏とコンサルタント氏が、お互いプロ同士妥協せず、しかもお互いの仕事に対するリスペクトを持ちながらやり取りしていたのは、感心を通り越して感動してしまった。検査のプロが施工のプロが「これは高級感ありますね」「いいお仕事されていますね」「なるほどこういう工法ですか」なんて会話を交わしているわけですよ。プロの仕事っていいなあ。


おかげさまで安心して住めます。ありがたい。プロにお墨付きをもらったので、物件を選んだ自分(と妻)の見識についてもちょっと自信がついたよ。


「内覧会同行」はそれなりにお金のかかるサービスだけど、不動産の取得にかかる金額に比べたら安い安い。今後、このような一個人がエキスパートにコンサルティングを依頼する機会というのもどんどん増えていくんじゃなかろうか。プロのちゃんとした仕事にはお金出したいですよ。価値があるんだもの。


たとえば「あるある」騒ぎを見ていて思うのは、我々はもっともっと消費者としての技術をレベルアップさせていかなければならないということだ。テレビを信じて鵜呑みにして裏切られてぶーぶー言うくらいだったら、自分で調べるなり、直接専門家の意見を聞くなりすればいいのだ。


お客様は神様ですとばかりに踏ん反り返って威張っていて、結局ころっと騙されるなんて事態はぜひ避けたい。客として謙虚に学び、分からないことは素直に質問し、ただし言うべきことをきちんと言う、プロの仕事にきちんと敬意を払いつつ、自分のお金は無駄にしない、そんな消費者でありたい。


と同時に、ジャンルは違えど、僕も仕事としてお金もらっている身分でもある。プロとしての仕事どうあるべきかを考えるという面でも、今回の内覧会は非常に参考になったのだった。もっと頑張らないといけませんね。うん。

  • 今回、内覧会に同行して頂いた建築・不動産関係のコンサルタント有限会社アーキスケットの出口佳蔵さん。プロ中のプロです。ゆえに素人にも分かるように懇切丁寧に対応してくれます。ほんとうに気持ちよかったです。